水底と月面

ジェンダー・セクシュアリティ・クィア・マンガ・アニメ・映画、感じた事をつらつらとメモ。

ドスト!

寄生獣 セイの格率」10話、見ました。石田さんボイスの島田がなんか割とあっけなく死んでしまってあれ?と思ったのだけど原作の思い出補正かもしれない。

さておき印象的だったのは、ミギーが『罪と罰』読んでたところ。いや最近立て続けにドストエフスキーに出くわすもので。

まずアニメ「SHIROBAKO」 。

やおい・BL研究者の金田淳子さんがTwitterで、アニメ制作現場で働く若者の経済状況の描写がリアルという旨を書いてらして、遅まきながらチェックしてみました。

 その点に注目しながら観たから余計になんだろうけど、チンされてるお弁当とか綺麗にしてるけど決して広くない部屋の工夫された収納とかコンロが1口だとかドアの薄さとかいちいち目についた。*1

で、「SHIROBAKO」は、高校時代にアニメーション同好会で一緒にアニメを作ったメンバーがそれぞれ卒業後色んなアニメに関する職業につきながら未来を模索してて。話のほとんどは主人公が働く会社での出来事に終始するんだけど友人であり仲間との繋がりも強くかけがえの無いものとして描かれている。*2

その中で唯一の大学生メンバー「りーちゃん」。脚本家志望でどうやら読書家のよう。最近はまってるのが「ドスト」。「ドストの『罪と罰』まじ面白くって徹夜なんです」「ラスコーリニコフまじキャラ立ってて」(7話)

その略し方の斬新さに耳を奪われたよドスト。8話で「『カラマーゾフの兄弟』?」って聞かれて「そうそのドストっす!」ってリズミカルに答えてたのでそれを言わせたかっただけかもね「ドストっす」。今やりたい事は何よりも「物語を書く事」という彼女の琴線のどこかに触れたようです。なお、あくまで言及のみで書籍の登場は無い。

 

 そんなドスト。今年出た訳ではないですがたまたま最近自分が読んだものにも。

業田良家機械仕掛けの愛』1巻(小学館 2012)第5話、その名も「罪と罰」。

近未来の日本のような世界で毎回様々な用途のロボットが出てくる連作短編集。この回は刑事ロボ、ボノボ。敏腕で人間の刑事仲間からの信頼も厚い。

f:id:sakanazuki_ntk:20141205113228j:plain2ページ目で『カラマーゾフの兄弟』を読みながら笑っている。(p.94)どことは書いてないけどマークが新潮文庫っぽいですね。

 

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今度は『罪と罰』。人間の愚かさがよく描かれた小説として愛読している模様。(p.101)

 その後ある出来事により状況が一転変わってしまうのだが、最終的に出てくるのはやはりドストエフスキー死の家の記録』。小説の内容はオチと重なるもののようです。*3

 

そして冒頭に書いた「寄生獣 セイの格率」10話。(キャプチャーはニコニコ生放送公式配信より)

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著者名は書かれてないけれど多分ドストのそれ。世界文学全集と書いてありますがそれにしてもこの装丁の手抜きさは哀しい…。話は、島田との闘いを終え、今後の方向性を話し合う中でミギーの事を警察に言おうか提案してミギーに即断られている場面。

寄生獣』は原作から相当年月が経っているのでアニメ化にあたってのアレンジはファッションや髪型だけではなく各種ガジェットが登場しておりそこも面白い。ミギーはパソコン操作もネット閲覧もお手の物だが、一方で古典文学を電子書籍じゃなくて全集で読むというのも同時に行うところがまたある意味現在の人間(?)っぽい。*4

 ロボットや寄生生物も触れるドスト。基礎教養としてあふるる現役感。

そしてなんというか、簡単に善悪が分けられない「人間の深さ・業」みたいなのを醸し出したい時に、小道具としてドストエフスキーは「丁度いい」のかもしれない。視聴者・読者の多くが名前と国名と代表作名ぐらいは知ってるという位置においても。作品内容を語らずに済んでしまう便利なもののような気がした。海外の大作家でも例えばガルシア・マルケスとかだったりするとまたきっと色々雰囲気が変わってしまうのだろう。

 

マンガやアニメに出てきやすい文芸作品、時代によっても変わりそうです。引用なのか言及なのか本自体が出てくるかでもまた違いそう。ヘッセとかリルケとか24年組の少女マンガで割と出てきたような印象があるけれど実際はどうなのかな。一方、日本の作家だと誰が好まれているだろう。太宰とか啄木、山頭火や放哉辺りはやはり鉄板なのだろうか。押見修造のマンガ&アニメ『惡の華』みたくタイトル、内容、さらにはルドンの絵を元にしたモチーフまで登場させるというああいう徹底した使い方はもはや小道具の域を超えているので別ジャンルかもしれません。

とここまで書いて思い出した、アニメ版「寄生獣」は各話サブタイトルが様々な古典からとられているとTwitterでどなたかが指摘されてました。

寄生獣 - Wikipedia

おお確かにその通り。これら各作品の内容とアニメの各話のストーリーがどのくらいリンクしてるのかも気になるところです。

なんだかまとまりなくなっちゃったけど、多分今後もこんな感じで。ふー、初記事書けた!

機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス)

機械仕掛けの愛 1 (ビッグ コミックス)

 

 

*1:金田さんのツイート見ながらぼんやり自分が考えたのはこういうことhttps://twitter.com/sakanazuki_ntk/status/538021342222626816 だけどまたどこかで考察深められたらいいな

*2:メールやLINEといったツールよりも頻繁に電話でやりとりしてるので最近の作品としては新鮮に感じた。

*3:【以下ネタバレ】ボノボは貧しき人々を救う為に偽札を作りばらまきそれで捕まってしまうのだが、それやるとハイパーインフレを起こして結局救えなくなるんじゃ?って思って腑に落ちなかった。博識そうなロボットなのにそこに考えが及ばないというのが疑問…

*4:ちなみにこれ原作でも『罪と罰』だったっけ?教えてコミックス持ってる素敵な人…!