マンガに描かれるコロナ禍
【この記事は2020年5月に執筆していたものの、途中で体調を崩してしまい書き上げるに至らず、ようやく今月になって再び筆をとったものである。COVID-19による危機的状況が刻一刻と変化しているこの状況下、ここで紹介する作品の状況の一部は既に古く現状とズレているとは思うが、あくまでこの時期どうだったか、どんな描写がなされていたかというピンポイントな記録として読んでいただければ幸いです。】
マンガ雑誌が好きだ。
売上は年々減ってるといわれており、周りのマンガ読みも単行本派ばかり。好きな雑誌が休刊になってしまった辛い経験は数知れずだ。
それでも月・週に発行されてるものを買って読む利点は今でも色々ある…と思う。何よりも、大好きな作品から嫌いな作品、更にはどうでもいいものまで一冊にまとまっているので楽に多くの作品に触れられ知識が深まり自分のお気に入りも見つけやすく、それから何が人気なのか分かり、これから来そうなものも肌で感じられる。「今」のドライブ感が好きなんだと思う。
さて、昨今のコロナ禍状況下、久しぶりに多く雑誌を買っていたところ、意外なくらい現状とリンクした話が出てくる出てくる。やはりこの経験したことのない社会状況はマンガ家さんの琴線にも強く触れるのだろうか。そもそも雑誌掲載時期の季節やイベントに合わせた話が載るなど、作品によっては時事を反映することはままある。勿論、過去や未来に時代設定がされてるもの、サザエさん方式もの、SFや時代物など例外は沢山あるため、描けるシチュエーション自体限定される。そんな中、2020年設定だとはっきり明言してない事が多い作品群がこうも特定の時事問題を何らかの形で取り上げたという事に興味を覚え、メモもかねて記録したいと思った。
「春だってのに、コロナのせいで みんなマスクして 不景気な面してんだろ。」
「緊急事態宣言が出てから 街の中を人が殆ど歩いていない。」
自営業の店主目線の独白というかたちで、「ビックコミックオリジナル」から2作。弘兼氏は『島耕作』シリーズでも時事ネタを頻繁に取り上げるしその時世間で話題の人をモデルにして出したりもするので意外性はない。
「…ビデオ飲み会とはなぁ…」
のりつけ氏も「令和」改元時にそれを取り入れた話を書いてたりしたし、時事ネタを入れがちな作家さんなのかもしれないが、これを読んだときは地味にぶっとんだ。オンライン飲み会の様子がこのように四枠同時進行という形で、最初と途中の計2ページをのぞいて最後までずっと同じ画面構成のまま進んでいくのだ。複数の映像枠をマンガのコマの代わりにするという発想。マンガの技法に常々注目しがちな身としてはしてやられた感だった。今回のこの記事を書く動機の一部になったほど。
「うちの編集部も明日からテレワークです」
ZOOM会議中
たまたまだが、今回のこの投稿で唯一の女性誌作品。やはりオンラインミーティングをしてるのだが、こちらは(一応)プライベート雑談では無く、テレワーク下での(一応)会議中の描写である。しかもマンガというのは固有名詞はあまり出されない事が多い中、ZOOMと明記してあるのが興味深いし、対話相手3人がそれぞれ個性に合わせたヴァーチャル背景を設定してるというのも芸が細かい。
すべての医療従事者へ。君たちがスーパードクターだッッ!!!
表紙をかざる『K2』主人公みずから、医療従事者に力強いメッセージ。
「人類はこのウイルスに対していまだに武器を持ち合わせておらん」
病院の薬品倉庫から盗みを企てる者も
「ランニングする時は①一人で ②人と距離を取る ③すれ違う時にくしゃみ・咳をしない。」
「お父さんはコロナの影響でしばらく在宅勤務よ。」
上掲の「結婚アフロ田中」と同じ号に載った作品。これまで紹介したものと打って変わって高校生が主人公の本作。義足になった主人公が陸上を新しい目標としていくのがメインテーマだが、10代の学生たちが、今まさにこの状況下どのように振り回され戸惑いながら日常を送っているかも実に生き生きと描かれている。
「自粛」
「当分の間一部を除き、部活動は停止」
「サッカー部は1軍だけ練習続けるってさ」
「こんな状態で受験に切り替えなんてできるかっつの!!」
「しょうがないさ、世界規模でウイルスが蔓延してるんだから。受験シーズンもどうなってるかわかんないし、前倒しで勉強して損はないだろ。」
「…俺らの高校青春ライフはもう終わりかよ。」
このリアルタイム感。 当初プロットを作っていたころは作者がどんな展開を考えていたのか分からないが、結果、見事に現在の状況を自然に組み込んでいる。そしてまた、10代の子たちが日常として甘受している不自由さもまた想像が出来るように描かれているのが読んでてグッとくる。
今後、小説や映画やドラマ、演劇などさまざまな創作物に今年の状況が何らかの形で取り入れられ反映されていくだろう。いや、もうすでに始まってるかもしれない、特にインディーズ・ネットメディアなどの動きが速い制作陣なら。ただ今回改めて「連載形式がメイン・制作に必要な人員が少ない」というマンガの特徴が、時事の反映に合っているという事を再認識した。(その意味で小説も、書き下ろしでは無く雑誌連載されてるものには既に取り上げられていてもおかしくない。)
新型コロナの一刻も早い収束を願いながら、同時に、この先も特にマンガにおいてどのように描かれ受け止められていくのか、見ていきたいと思っている。